経過的職域加算(遺族共済年金)の定期金評価

相続税法施行令1条の3で「退職手当金等」とされる年金の課税根拠と評価方法

本資料について 本資料は税法の論点整理のための一般論の解説です。個別案件への当てはめにあたっては、必ず根拠条文・通達・最新の裁判例等を担当者自身でご確認ください。

目次

  1. 結論サマリー
  2. 論点1:経過的職域加算の相続税法上の取扱い
  3. 論点2:定期金評価(相続税法24条1項3号)の検証
  4. 論点3:他に確認すべき事項
  5. 引用根拠一覧
結論
  • 評価方法と評価額は妥当(相続税法24条1項3号 終身定期金。予定利率2.00%、余命年数13年、複利年金現価率11.348、計算式すべて条文・通達・実務に整合)
  • 「経過的職域加算分を死亡退職金扱いで計算する」処理は、現行法上正しい取扱い
  • 本件は相続税法3条1項2号(退職手当金等)として課税され、評価は同法24条1項3号で行い、500万円×法定相続人数の死亡退職金等の非課税枠(同法12条1項6号)の適用余地あり

論点1 経過的職域加算(遺族共済年金)の相続税法上の取扱い

1-A 制度の位置づけ(被用者年金一元化後の経過措置) +
  • 平成27年10月1日の被用者年金一元化(平成24年法律第63号)により、共済年金の3階部分(職域加算)は廃止された。
  • 一元化前から組合員期間を有する者については、経過措置として旧3階相当を「経過的職域加算額」として継続支給。
  • 公務員(国家公務員・地方公務員・警察共済組合員等)の遺族には、改正前国家公務員共済組合法88条1項(遺族共済年金)が、平成24年改正法附則の経過措置によりなお効力を有するものとして支給される。
1-B 所得税・相続税の取扱い +
区分受給権発生時期所得税相続税
改正前の遺族共済年金(職域加算含む) 平成27年9月以前 非課税 非課税(旧国共済法50条「公課禁止」)
経過的職域加算額(遺族共済年金) 平成27年10月以降 非課税(所法9条1項3号) 課税(相法3条1項2号)

私学共済事業本部HP「年金等給付にかかる課税」、KKR(国家公務員共済組合連合会)HP、警察共済組合HP「年金の支給と税金」いずれも、「経過的職域加算額(遺族共済年金)」は「相続税の課税対象」と明示しています。

1-C 課税の根拠条文 — ここが本件の中核 +

経過的職域加算(遺族共済年金)の課税根拠は次のとおり整理されます。

  • 相続税法3条1項2号(退職手当金等)として課税
  • 評価は相続税法24条1項3号(終身定期金)で行う
  • 相続税法12条1項6号により「500万円×法定相続人数」の非課税枠が適用可能
「相続税法3条1項6号(契約に基づかない定期金に関する権利)」との関係
3条1項6号として整理する見解もあり得ますが、施行令1条の3第1号で正面から「退職手当金等」として規定されているため、3条1項2号で整理するのが現行法上正確と解されます。
1-D 非課税枠の適用 +

相続税法3条1項2号該当となる結果、相続税法12条1項6号により「500万円×法定相続人数」までは非課税となります。複数の退職手当金等(経過的職域加算分、退職等年金給付の遺族給付、他の死亡退職金)がある場合は合算して非課税枠を計算します。

論点2 定期金評価(相続税法24条1項3号 終身定期金)の検証

評価額は次の3つのうちいずれか多い金額(相続税法24条1項3号):

(イ)(ロ)が記載なし(実質ゼロ)の場合、(ハ)が評価額となります。

各要素の検証(例:1年当たり195,335円、女性78歳、令和7年10月時点)

項目検証結果
1年当たりの平均額 195,335円 年金決定通知書記載額と一致
予定利率 2.00% 令和7年10月分の長期(7年以上)基準年利率と一致(課評2-20令和7年5月26日付通達、同年10月20日付一部改正)
余命年数 13年 第23回完全生命表 女性78歳=13.79年、相続税法施行規則12条の3により1年未満端数切捨て → 13年
複利年金現価率 11.348 (1−1.02^-13)÷0.02=11.348374、小数第3位四捨五入で11.348
評価額 2,216,661円 195,335 × 11.348 = 2,216,661.58 → 2,216,661円
2-A 予定利率の根拠(評価通達24-3) +

財産評価基本通達24-3により、定期金給付契約に基づくものはその契約の予定利率、それ以外の法定年金等は取得時の基準年利率を採用します。

  • 公務員共済の遺族年金は契約に基づかない法定年金
  • 取得時:令和7年10月31日 → 令和7年10月分の長期(7年以上)基準年利率:2.00%
  • 余命年数13年は「7年以上」に該当するため長期利率を使用
2-B 余命年数の根拠(第23回完全生命表) +
  • 適用する完全生命表は、評価通達200-3により「権利取得年の1月1日現在で公表されている最新版」
  • 令和5年1月1日以降取得分に第23回完全生命表(令和2年データ、令和4年3月公表)が適用
  • 受給権者の年齢は満年齢端数切捨て(完全生命表は満年齢ベース)
  • 例:昭和22年6月3日生まれの女性、令和7年10月31日時点で78歳5ヶ月 → 78歳適用
  • 第23回完全生命表における女性78歳の平均余命:13.79年
  • 相続税法施行規則12条の3により1年未満端数切捨て → 13年
2-C 複利年金現価率の計算 +

複利年金現価率の計算式:

複利年金現価率 = (1 − (1 + i)^(-n)) ÷ i
    i:予定利率(小数)、n:年数

予定利率 2.00%(=0.02)、年数 13 の場合:
(1 − (1.02)^(-13)) ÷ 0.02 = 11.348374...
→ 小数第3位四捨五入で 11.348

余命年数が変わった場合の比較:

余命年数複利年金現価率評価額(年金195,335円の場合)
12年10.5753412,065,734円
13年(本件)11.3483742,216,734円(明細書値2,216,661円)
14年12.1062492,365,114円

論点3 他に確認すべき事項

3-A 遺族厚生年金(2階部分)を評価対象に含めていないか +

遺族厚生年金は厚生年金保険法41条1項(公課禁止)により相続税非課税です。評価明細書の対象は「経過的職域加算分(旧3階部分)」のみであるべきで、年金決定通知書に「経過的職域加算額」と明示されていることを確認してください。

3-B 他に死亡退職金扱いとなる一時金があるか +

共済組合からは、経過的職域加算年金とは別に「退職等年金給付」(新3階、平成27年10月以降の組合員期間分)の遺族給付が支給される場合があります。これも相続税法施行令1条の3に基づき退職手当金等として課税されるため、別途確認が必要です。

3-C 非課税枠の按分 +

500万円×法定相続人数の非課税枠は退職手当金等の合計額に対して適用されるため、複数の退職手当金等がある場合は合算して非課税枠を計算します。複数遺族で按分する場合は、相続税法基本通達3-25の按分ルールに従います。

引用根拠一覧

条文

通達・質疑応答

制度資料